角畑唯介(かくはた・ゆうすけ),極夜行.2018年2月,文藝春秋.
グリーンランド北西部の北緯78度から79度にかけてを,極夜の時期に探検した記録です.一匹の犬と一緒にソリを引いての旅行で,氷河を登り,氷床・ツンドラ地帯を横断し,海岸沿いを北東に向かい,内陸のセプテンバー湖の近くの「楽園谷」に達した後,同じルートを戻ってくるというものです.太陽が全く昇らない氷点下30℃以下での活動,事前に運び込んでいた食料などが北極熊に荒らされて命の危険に晒されるという過酷な旅です.
極夜が開け,初めて戻ってきた太陽を見た時の感動も伝わってきます.現代の冒険が何なのかを考えての,この時期,この地域への冒険です.
「闇は人間の歴史の中で常に冥界や死と関連づけられてきたが、その恐怖の本質は闇そのものにあるのではなく、自己の内部で漠然と構築されてきた生存予測が闇によって消滅させられてしまうことにあるのだ。」(139p)
旅の描写も興味深いですが,極限状況で何を感じ,何を考えたのかが語られていて,いろいろと考える材料を与えてくれる本です.
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