組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(いわゆる共謀罪法案)
2017-04-08


 共謀罪法案が国会に提出されました。前にもこの法案の異常さについて述べましたが,再度考えてみました。

 この法案には立法の経過からして幾つかのウソがあります。1)オリンピックが開けない,2)国連の条約が結べない,3)一般人は対象外,の三つについて述べます。

<この法律が成立しないと東京オリンピックが開けない>
 安倍首相の発言です(2017年1月10日,共同通信との単独インタビュー)。オリンピック候補地として立候補したときは,当然ながらこの法律は出来ていません。ですから,世界に向かって公然と嘘をついてオリンピックを持ってきたことになります。

 安倍首相はオリンピック招致演説の冒頭でこう述べています。
 「東京で、この今も、そして2020年を迎えても世界有数の安全な都市、東京で大会を開けますならば、それは私どもにとってこのうえない名誉となるでありましょう。」
(The Huffington Post投稿日: 2013年09月08日 02時16分 JST 更新: 2013年12月19日 07時08分 JST)

 自分の言ったことを見事に忘れているのか,目的のためならその時に応じて何とでも言うという習性のためか。

<国連越境組織犯罪防止条約を批准できない>
 これについては,法律の専門家集団である日本弁護士連合会が,そんなことはないと言い,その理由も簡潔に述べています。
 「新たな共謀罪立法なしで国連越境組織犯罪防止条約を批准することはできます。」
(https://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/icc/kokusai_keiji_c.html)

 「国連越境組織犯罪防止条約」(国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約:
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/treaty156_7a.pdf)とはどんなものでしょうか。

 この条約は,「第一条 目的 この条約の目的は,一層効果的に国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦うための協力を促進することにある。」としています。そして,条約が適用されるのは「・・金銭的な利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため・・」の「組織的な犯罪集団」としています。
 これらは現在ある国内法で対応できるというのが日本弁護士連合会の見解です。
 さらに,上記条約では,「第四条 主権の保護 1 締約国は,国の主権平等及び領土保全の原則並びに国内問題への不干渉の原則に反しない方法で,この条約に基づく義務を履行する。」としています。
 つまり,この条約のために新しい法律を作ることは義務づけられていません。

<一般の人は対象にならない>
 これについては,2017年2月16日に法務省が,「正当に活動する団体が犯罪を行う団体に一変したと認められる場合は、処罰の対象になる」との見解を明らかにしました(朝日新聞デジタル,金子元希 2017年2月17日00時51分)。
 ここで言う「認められる場合」は,誰が判断するのでしょうか。取り締まり当局と考えるのが普通と思います。


続きを読む

[地質技術者のつぶやき]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット