「地震による地すべり災害」刊行委員会編,地震による地すべり災害−2018年北海道胆振東部地震.北海道大学出版会,2020年9月.
タイトルにあるとおり2018年9月6日の北海道胆振東部地震で発生した斜面崩壊についての諸論文を掲載しています.写真・図面類は,すべてカラーです.
「序章 地震動に起因する斜面崩壊」(若井明彦)から始まって「第10部 地震地すべりによる被害を軽減するためにまで」(田近ほか)まで,胆振東部時地震で見られたほとんどの現象について書かれています.
いくつか注目すべき論文を紹介します.名前の後の数字は章番号です.
廣瀬 亘,2.1 地形概要と表層地質・テフラ層序
今回の地震で,広範囲にわたる斜面崩壊が発生した原因は,内陸地震による強振動のほかに次のような原因が考えられる.
・樽前火山や恵庭火山のテフラ層が斜面にとどまっていた.
・テフラ層堆積斜面が傾斜20〜30度で地震動をきっかけに崩落した.
・崩落後,斜面下部に到達する程度に厚くテフラ層が堆積していた.
・テフラ層を風化させるための表流水,地下水の集水地形が形成されていた.
池田光良・細谷卓志・阪田義隆,2.4 斜面崩壊における降下軽石層の地下水の役割
地震発生前1か月の水収支解析を行うと,かなりの量の地下水涵養量があった.このため樽前dテフラ中に宙水が発生したか過飽和に近い状態になっていた.この層の下位にローム化した樽前dテフラなどがあり,これらが素因となって斜面崩壊が発生した.恵庭aテフラや支笏降下テフラなどの難透水性層も同様の働きをした.
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