本の紹介:ドキュメント 豪雨災害〓そのとき人は何を見るか
2014-08-01




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稲泉 連,ドキュメント 豪雨災害〓そのとき人は何を見るか。岩波新書,2014年6月。

 2011年9月3日から4日にかけて紀伊半島を中心に発生した豪雨と土砂災害がどんな様子だったのかを記録した第1章と第2章,そして,東京都荒川を中心とする低平地の過去の水害がどんな様子だったのかを述べた第3章からなる。

 2011年の紀伊半島大水害は,各所で深層崩壊を発生させたことでも記憶に残る水害となった。雨の降る音と川の激流とともに大きな石が流れていく音,そして,川の水位が,これまで考えられなかった速さで上がっていく様子が証言をもとに描かれている。
 周囲が水だらけでどこに身を置いたら良いのか分からないという恐怖にさらされる時間が長いという点で,大地震に勝るとも劣らない怖さを伴うことが,このドキュメントから伝わってくる。

 1時間に100mmの雨が降るという状態がどんなものか,経験しないと分からないだろう。気象庁では1時間80mm以上の雨を「猛烈な雨」と呼んでいる。息をするのが苦しくなるような猛烈な雨で,雨そのものに恐怖を感じるという。

 第3章の東京堤平地の問題も対応の難しい問題である。人口減少の社会動向と併せて,数十年以上の長いスパンで減災にどう取り組むのかが問われているという著者の指摘はうなずける。

 豪雨災害に興味のある方には,是非,読んで欲しい本である。

[地質技術者のつぶやき]

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