地球温暖化と北海道の気候
2010-02-25


 北海道開発局と寒地土木研究所主催の研究発表会が,2010年2月23日(火)から25日(木)まで開かれました.
 23日は札幌駅北口にある第一合同庁舎で開会式と基調講演が行われました.
 基調講演は札幌管区気象台の長井秀樹氏(地球温暖化情報予報官)の「地球温暖化と北海道の気候」でした.長井氏の講演の概要は次のようでした(見出しはブロク筆者が付けたものです).


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講演終了後質問に答える長井秀樹氏


温室効果ガス

 地球は大気があるために温室効果が働き全球の平均気温が+14℃に保たれている.大気がない場合地球の平均気温は-19℃になると推定される.火星は大気がほとんど無く平均気温は-50℃である.一方,金星は大気中の96%が二酸化炭素であるため+420℃となっている.
 温室効果ガスとしては水蒸気のほかに二酸化炭素,メタン,一酸化二窒素,ハロカーボン類(フロンガスなど)でそれぞれ温室効果ガスとしての効果,大気中に含まれる量が異なっている.二酸化炭素,メタン,一酸化二窒素の大気中の濃度は1700年代半ばくらいまではほぼ一定であったが,それ以後急激に増大している.二酸化炭素は280ppm から380ppm へと増大している.過去の温暖期には二酸化炭素濃度が300ppm 程度までは上昇しているが,300ppm を越えたのは1900年頃からである.
 二酸化炭素濃度は北半球の中・高緯度帯で高く南半球では低いという特徴を持つ.その理由は北半球に二酸化炭素の放出源が多いためである.また,季節的には植物の活動が活発になる春から夏にかけて減少し,夏から翌春にかけて増加するという変動を示す.

100年間の気候変化

 この100年間ほどの世界の気温上昇は0.74℃であるのに対し,50年間で見ると1.28℃となっていて近年になるほど気温上昇が著しくなっている.
 降水量については,世界的には南北アメリカの東海岸,ヨーロッパ北部,アジア北部で増加しているが,サヘル地域,地中海地域,アフリカ南部,アジア南部では減少している.日本は特にはっきりとした降水量の変化傾向はないが年ごとの変動幅が拡大傾向にある.

 日本の年平均気温は100年当たり1.11℃,北海道は0.92℃である.また,北海道は12月から2月までの冬と3月から5月までの春の気温変化が100年間で1.2℃を越えているのに対し6月から8月の夏季は長期的な変化傾向が見られない.

 日本全国の気温の変動を見ると1980年頃から異常高温が増加しているのに対し異常低温は減少傾向にある.また,日降水量が100mm 以上の日数も増加傾向にある.
 洪水や土砂災害にとってやっかいな局地的大雨は過去30年を10年ずつに区切ってみると明らかに増加傾向にある.1時間降水量50mm 以上の回数は,1976-1986年の平均回数が160回,1987-1997年は177回,1998-2008年は239回となっている.

 年ごとの最深積雪は1990年代以降減少傾向にある.その原因は,気温上昇により雪でなく雨が降ることと降水量自体が減少していることである.
 オホーツク海の海氷面積の最大値はこの30年ほどで5.52万平方メートル減少していて,この面積はオホーツク海の3.6%に相当する.

今後の気候変動

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[地質技術者のつぶやき]

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